茨城県土浦市|PAINTPRO TSUTSUI(ペイントプロ ツツイ)|屋根塗装、外壁塗装、お家の塗替え

屋根材の割れや剥がれが多い、無石綿(アスベスト)屋根の問題と、 お客様と私でどうにかしてみた、という話。

2021年1月20日

お久しぶりです、つくばに暮らす塗装屋、TNPサービスの筒井です。

2020年年末に、ちょっと(意訳:だいぶ)大変だった、
屋根の塗り替えと対処方法の話です。

工事前の屋根
これは、

・屋根が無石綿だった状況と経緯。
・この屋根どうするかー、とお客様と一緒に考えた。
・最終的には塗装でどうにかしてみた。

っていうお話です。

 

 

築17年ほど経過、屋根壁の塗替えでお伺いし、施工が始まった物件。

お客様とは念入りな打ち合わせはしたものの、屋根に関しては足場をかけて確認するまで、
塗装の施工法はちょっと待って頂いておりました。

で、屋根に上ると・・・。


違和感ある屋根


ひどい屋根はもっと傷んでいるけど、なんとなく違和感を感じる屋根材。
薄く見えるし、反っているし、砕けてるし。

でも、ハウスメーカーが毎回点検していたということで、写真や管理表などもあり、
そっちが正しいよな普通・・・。

でも、おかしい。

というわけで、図面を出してもらうと、クボタのグリシェイドNEOでした。


『築17年ほど(2003年・平成15年頃)、屋根材が割れたり反ったりする』

と聞き、まず想像できる話が、ニチハによるパミールを代表とされる

「スレート屋根材のミルフィーユ状破損問題」

でした。


昔から石綿(アスベスト)の安全性には問題があり、徐々に変更していった流れがありますが、
平成8年から13年頃に起こったアスベスト規制で、全面禁止となった際、
無石綿商品に切り替えた時に、経年劣化による強度の確認がよくわからないまま、
市場で販売された商品が不具合を起こしまくっているという問題のことです。


このノンアスベストに変更された素材が、10年くらい経過すると、既存のものと比べ、
異様に傷みやすく、塗装しても破損している下層部分から剥がれるため、
塗装業界が一斉に叩かれた経緯があります。


さらに厄介なのは、
『原因や因果関係がわかっていても、責任は放棄されている』
『ハウスメーカーの保証期間が10年を超えている場合が多く、補償してもらえない』

これが問題に拍車をかけています。


ちなみに、アスベストを含まれているかいないかは、
製造メーカーのホームページで確認できる場合があります。
旧クボタ、(現ケイミュー)における、アスベストが入っているかどうかの建材の一覧

https://www.kmew.co.jp/kenkai ケイミュー 石綿(アスベスト)に関する見解書

で確認できます。


この時点でお客様に報告します。

屋根を施工前に、この状況下で私ができることは、
①塗装工事をするか・しないか。
→このまま塗装すると頑張っても問題が起きるので、そのまま塗らない方が良い。

②屋根を直すなら、
直す業者を私が呼ぶか、お客様が業者を呼ぶか。
→直す方向にするしかないので、私が業者を呼んでしまうと、ストップが効かない
→お客様がハウスメーカーや知り合いの屋根屋に頼む(私を含め)ほうが、
暮らすのに安心。

③屋根を完全に直すか、部分的に直すか。
→全部やれば安心だけど、吹替え工事になり予算金額が合わない
→部分的に行うのは不安材料が大きいけど、屋根のために足場費がまたかかるのは都合が悪い

ということです。

ただ、私が気になったのは、

『ハウスメーカーが保証のために毎回保守点検をしていっているのに、
この屋根問題ありますねって指摘がないのはおかしい。
もっと前に屋根に現象が発生しているだろう状況なので、写真なども全部管理されているのに
黙っていたことは、問題なのではないかしら?』

ということです。


普通ならどう見ても保証期間も切れてますので、泣き寝入り案件かなと思います。

しかしこちらとしても、屋根のためだけに再び足場をかけるのは合理的じゃないし、
そもそも、屋根塗装はおろか、外壁塗装も始められないわけです。

というわけで、お客様と相談し、お客様自ら、ハウスメーカーに掛け合う!
ということにしていただきました。

それで外壁塗装だけ先行して、屋根は後からどうするか決めるため、
とりあえず、どの業者も行う洗浄だけでして一時停止することとなりました。

 


・・・。
あれから2か月過ぎました。

ハウスメーカーとお客様の話が、とりあえず部分補修を有償補償するということに決まり、
割れた屋根材に関しては交換か、接着剤にて接着するということになったそうです。

最終的には塗装するということで納めていただきました。

(まぁここら辺は、お客様とハウスメーカーの方で2か月かかった経緯もあるのですが、
 私は足場を貸しただけの部外者になりますので、割愛させて頂きます。)

 

正直、塗装で持たせることは現実的ではないのですが、
・屋根劣化のひどいところだけ交換してあれば、下地の生きているところは塗装が可能。
・一度に屋根の葺替えができるほどの予算がないから、延命措置としての塗装と割り切る。

ということで、「目標10年」です。

 

で、交換前の屋根がこちら

で、交換後の屋根がこちら


いやいやいや!ここまでやるなら全部やっても変わらなくね!?
という、お役所チックな『おかしいところだけ直しにきました』工法。

ハウスメーカーでこれやるんだ…むしろこの直し方のほうが手間かかるだろ…
と、お客様も私もびっくりな状況。


主に東と南の屋根がおかしく、北と西の屋根は、さほど問題がなく、

東と南はほとんど交換・一部接着剤で固定
北と西はほとんど接着・一部交換

となりました。

直し方としては、業者さんは屋根を取り外して、新しい屋根材を
釘で固定するか、接着剤で固定するかという方法になり、
防水材であるルーフィングシートには干渉しない工法というものがあるようです。

(工法があるってことは、こういう問題が内包してたんじゃないのって思いますけどね)

 

この2つはお客様が写真を撮っていたもので、正しくは施工しているようなんですが、

1円でも有償で直すなら、全部やってもいいように思う私です。

 

さて。

とりあえずは屋根の下地は直ったので、じゃあ塗装で

『きれいに、目標10年耐させる屋根にする塗装』

をしましょうという、ここから私のターンになります。


まず、
・脆弱な下地ではあるが洗浄が終わっていて剥がれるものはもうない。(塗装可能)
  ↓
・素材を塗り固める必要があるので浸透性の塗料(カチオン型浸透塗料)
  ↓
・表層が固く、内部でも硬化する塗料(2液型エポキシ塗料)

 

という考えで、下塗りは2液型の変性エポキシ塗料

上塗りは、下塗りに2液型エポを使ったなら何でも施工できますので、
2液型のシリコン塗料で、かつ屋根素材の温度変化による劣化を避けるために、
遮熱塗料という選択です。

鉄板部分には、錆止め効果の高い2液エポキシで、雪止めなどはステンレスのため、
ステンレスが塗れる変性エポを塗ります。

金属部位の錆止め


まずは鉄部に錆止めを…。って、赤いじゃん!赤錆じゃん!
赤錆の上に、赤い塗料や黄色い塗料で仕上げようとすると、
透けて(カブりが悪いといいます)しまうのです。
防ぐために白い下塗りを入れるのですが…。二度手間だー。

というわけで、硬化剤を入れてしまったので、鉄部の下塗りを赤錆で全部仕上げ、
次の日に、白錆で全部2層目の塗装を行い、鉄部の錆止めは万全に。

 

次に屋根材に下塗りを白い浸透エポキシ塗料で行うのですが、
隙間の段差が深い!ローラーであまり良くは入らないため、
これまた刷毛で、一画ずつ塗装。

うがー!すごく面倒。でもやってるうちにだんだん楽しくなってきた。

そのあとでローラーで平面を塗っていきました。

 

ここまで来ちゃえば乾燥したのちに、上塗りの色で2回塗装をすれば完成です。

ちなみに、この屋根にはタスペーサーをはじめとする隙間緩衝材は入れてません。
スカスカで入らないです。交換したところは接着剤でサンドされているので、入りません。

タスペーサーのセイムさんは、接着剤で重ねしろがくっついていると、雨漏りすると
データ実験でも謳ってましたが、このハウスメ―カー
(最終的には屋根材メーカーのケイミューですけど)

『両端を接着しているだけで、間口方向に接着してないので絶対漏りません』
とお客様に言い切っていたようですよ。

実験データ化してください(笑)

というわけで、塗装後の写真。


写真


下塗りを多めに乗せているので、スレート劣化部分のえぐれ跡や、接着剤の
ミミズ状の模様も目立たなくなりました。

塗装ではこれが限界ですし、正直、下から剥がれてくる場合には、塗料の架橋力が
あるうちは良いですが、だんだん無力になり剥がれます。
それでも10年は手堅いと思いますので、データは取りたいところです。

データ取ったところで次回は塗装ではなく葺替え屋カバー工法で、
屋根自体を保護してもらわないと、屋根には不都合が出ると思います。

お客様が博識な方で、ハウスメーカーさんにも毅然とした態度で臨んでくださったので、
私としても対策を練る時間ができ、施工が安心してできました。

ちょっと特殊な事案にはなってしまいましたので、これを読んでいる方に、

「屋根の補償ハウスメーカーがしてくれるってよ!」

ってところにはいかなかったのですが。

ただ、パミールやグリシェイドNEOをはじめとする、無石綿(アスベスト)の
建築素材のメンテナンスは、今時期からがピークになりますから、
施工前に確認することは必要かなと思います。

 

また、屋根材がはがれていても、塗装できる場合と塗装できない場合があるわけです。

ぺんきやが言うのもなんですが、葺き替え工事ができる予算があれば、そちらの方が絶対に良いです。

 

ただ、工事を始めてしまってから、これは…、ということもあり得ますので、最初にどういう状態なのかを調べてくれたり、施工中こういったことがあり得るからね、と説明をしてくれる業者さんを見つけておく必要があるでしょうね。

塗装できないので葺き替えしましょう、ではなく、なぜできないのかということを説明してくれる業者さんにお話を聞くのが良いと思います。