[錆止め塗料]今はわかりやすいけど・・・。[密着性の問題]
2009年11月5日
錆止め塗装や防錆、防食塗装などがもともとはメインの茨城・筒井塗装です。
さて、今回はこのタイトル。
実に最近悩んでいることで、それは塗料の選択です。
最近は環境問題が大きく取り上げられている状態で、昔よかった塗料というのが使えなくなってきています。
そんな状態で一番影響を受けているのが錆止め塗料です。
さて、錆止めの話をする時にまず考えることは鉄がどうして錆びるのかということ。
詳しくははしょりますが、簡単に言えば、鉄と酸素が化学反応を起こして酸化鉄になる状態です。
赤錆が有名ですが、鉄を軸に考えると赤錆と黒錆があり、安定している黒錆(黒皮)に対して非安定的な赤錆はどんどん錆が進行します。
これを鉛と油の皮膜で覆えば、酸化や電気分解が起きない(起こりにくい)ので錆びなくなる(錆びにくくなる)というコトになります。要するに酸化の原因となる酸素を遮断するか、化学反応類で酸化しにくい状態にすればいいわけです。
これには鉛が有効で、鉛丹やシアナミド鉛、亜酸化鉛などがありました。また亜鉛(ジンクリッチ)やジンククロメート、亜鉛メッキ密着用の鉛酸カルシウムなどがありました。
さらにこれを溶くためにズボイド油に代表される、油脂での皮膜が必要とされ、油を塗る感覚での錆止め塗装という感じがあります。これは1種錆止めといわれるゆっくり乾く塗料として、鉄工面にじかに塗られる1層目の塗料として存在してました。(あ、難しいのでウォッシュプライマーの話は飛ばしてます。また自分の感覚で喋っているので、分類や皮膜技術等として詳しくはありません、あしからず)
実際に世の中で使っている塗料は合成樹脂に鉛を混ぜている「2種」という種類で本来1種後に塗装する2層目の塗料です。1種より乾燥が速くて重宝します。しかし、乾燥が速い塗料というものは密着が悪く、塗膜が花が咲いたように割れる現象が起きるため、「1種+2種」と行うのが通例ですが、乾燥を速め現場の工期を守るために「2種+2種」という塗り方をします。
・・・ぶっちゃけますと、1種2種、2種2種について知らない人が多いのと、現場でそれを望まれないという世界があります。1種2種の判断がつかない塗装職人が多いという話にもなるのですが、まぁ少なくとも国の資格のある「塗装技能士」さんならそれくらい常識かと。
さて、錆止め塗料が鉛を使用するために健康被害がでる原因になっていることは、考えればわかるんですが、どちらかというと鉛時代の塗料密着試験の適合表に難があります。
よく見ると、鉛系の錆止め塗料には合成樹脂系以外の樹脂系塗料の密着テスト結果としては「不適」という扱いになっています。
時代を考えて見ると、「強溶剤のアクリル種・ウレタン種」しかなかった塗料を、弱溶剤錆止め(下塗)では問題がある、勝てないからそういった仕様になったのかなと思いますが、それにしても合成樹脂下塗に、ウレタン樹脂系がだめとなるとどうしようもありません。
今までの鉛系塗料はJISK56○○に格付けされていましたが、JISK5674鉛クロムフリー(有害物が入っていない錆止)に変更になっています。しかし変更というだけで、合成樹脂系にはかわりはないので、果たして密着問題が改善されているのか疑問です。
・・・単品での適合表はウレタンでもシリコンでもフッ素でも、弱溶剤系なら大丈夫とはなっているんですけどね。
それを踏まえたうえでJASS-18の変性エポキシ樹脂塗料の錆止め塗料の登場により、塗料のオールマイティー差がでるわけですよ。
しかし、変性エポキシは塗料の膜厚がつかないと防錆効果がまるでなし。そう、膜厚による酸素遮断がメインの防錆塗料なので、鉛みたいに塗ってあればいいやという塗料ではなく、しみじみ膜厚を管理しながら塗装する必要があります。
加えてエポキシは素面に対し締まってくる性質を持っているので、塗料が時を経て硬質なものに変化した時に上塗が堪えられる層間剥離を起こす原因になるのではないかという心配は拭えません。しかも厄介なことに、変性エポキシ塗料が使われはじめてから、長い時間を経たデータがあまり施工している職人に流れていないことも事実で、メーカーの販売の鵜呑みで仕事をしているに過ぎません。
しかし、エポキシと他の樹脂結合の相性はよく、密着力に申し分ありません。正確には同種樹脂の方が層に違いが出来ず安定するんでしょう。また塗装時期が近く、塗料希釈材が同じなら、層が変わることがないので、層間剥離はより起こりにくくなります。
ここまでわかっている状態で「変性エポキシを使いましょう」という判断なら安心できるのですが、先に申したとおり、鉛系が使えない代行品でのエポキシ塗料というのは選び方として不順です。
それに、旧塗膜に問題がなければ、より強溶剤を使った方がよく、たとえ弱溶剤だとしても、「2液型」の方が塗膜強度はあると思うわけです。溶剤で溶ける分、樹脂・顔料の決めも細かく、細部に浸透する塗料であるわけですし、反応硬化のタイプの方が塗膜強度があるでしょう。
ただ、世の中ほとんど旧塗膜があり、侵食する可能性が高いので、弱溶剤を使うべきという判断をすべきで、「便利だから変性エポを使う」という感覚も、否定はしませんが、こだわる人から言わせてもらえば不順かと思うわけです。
考えるとさらにわからない「鉛系に高級樹脂」「変性エポの選び方と防食性能」「塗料密着性」。
問題なけりゃ、安くて錆びないものがあれば一番なんですが、これまたなかなか難しいです。
秋の夜長に考える塗料性能の話としては面白いところなんですが、実際塗りながら出来るといいんですよね。でもこういう話が好きな方が出てくると延々付合わされるので、ほどほどにしときますー(笑)